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ライフステージに応じた⾎友病のつきあい⽅今から始める定期補充療法

監修

兵庫医科大学病院 血液内科 德川 多津子 先生

定期補充療法を始めるのに、遅すぎるということはありません。

定期的に血液製剤を輸注して凝固因子のレベルを一定以上に保つことで、出血を未然に防ぎ、関節を守る定期補充療法。定期補充療法の普及によって、若い世代の患者さんの多くが、血友病ではない人たちと同じようにスポーツや仕事を行っています。

「定期補充療法は子どもがするもので、大人には関係ない」と考えておられる方も多いかもしれません。しかし、成人後の開始でも重大な出血を予防したり、関節症の進行を遅らせられることが知られています。出血や関節機能の不安が少なくなれば、日常生活を安心して過ごすことができます。

成人血友病患者さんに対する出血時補充療法と定期補充療法

イタリアでの研究報告です。18歳から72歳の血友病患者さん54人が定期補充療法を開始し、4年あまりの経過をみたところ、出血回数が激減、検査・通院・入院回数も減少しました。

定期補充療法経過のグラフ

調査概要
●対象:イタリアの重症血友病患者84人のうち、18歳以上で定期補充療法を開始した重症血友病患者54人(うち、血友病A:50人、B:4人)
●方法:患者の診察記録等から出血頻度、検査・通院・入院頻度に関するデータを調査した

引用)Tagliaferri A et al. Haemophilia. 2008. 14(5):945-951

今からでも定期補充療法を始めるメリット

  • 万が一の出血から身体を守る

    • 大きな出血
    • 脳出血
    • 転倒による怪我
  • 万が一の出血から身体を守る
  • 関節症の進行予防

    • 不安なくエクササイズやリハビリができる
    • 活動量が増え、生活習慣病の予防にも
  • 関節症の進行予防
  • 日々を活動的に過ごせる

    • 出血を心配しない生活
    • 外出したり、新しい趣味に挑戦する
  • 日々を活動的に過ごせる

自己注射が不安になったら

老眼が進んで手元が見えない、指や手首の関節の調子が悪いなどで、自己注射が不安になってきたとき、またはこれから自己注射を始めようという方をサポートするさまざまな支援があります。

自己注射が不安になったら
①近所のクリニックとの連携

ご自宅近くにかかりつけ医があれば、注射をお願いできるかもしれません。一度、血友病の主治医に相談し、連携を依頼してもらいましょう。

②訪問看護の活用

訪問看護を利用して、看護師に自宅に来てもらい注射してもらう方法もあります。代わりに注射してもらうだけでなく、ひとりで注射するのが不安なときに注射の準備や介助を依頼することもできます(ただし、ヘルパーや訪問介護サービスとは異なりますので、家事支援や外出時の送迎などは頼めません)。

③親族による家庭輸注

配偶者やお子さんなど身近にいる家族に注射してもらうこともできます。主治医に相談してみてください。

※近年、注射間隔を長くできる(効果が長持ちする)製剤が登場しました。自己注射が不安な方や誰かに注射を手伝ってもらう方の選択肢として期待されています。