幼児期~小学生 血友病治療で目指す未来

定期補充療法を見直そう

監修
名古屋大学医学部附属病院 輸血部 鈴木 伸明 先生

これまでに出血経験がなくても油断は禁物です!

血友病であっても定期補充療法を実践していれば、血友病でない人と同じように制限なく社会生活を送ることができるようになりました。子どもの頃から定期補充療法をしていれば、1度も出血したことがない人もいるかもしれません。調子が良い状態が続くと、ついつい輸注を忘れたり、受診を先延ばしにしてしまいがちです。定期補充療法をやめた途端に出血や痛みは起こらないかもしれません。しかし、いずれ出血が起こり、さらに出血を繰り返すと関節に影響がでることは避けられないのです。

生涯にわたる関節障害のシミュレーション

生涯出血時補充療法群では、関節障害は10歳前後から急速に悪化します。しかし、18歳まで定期補充療法で関節の状態を良好に保ってきた人でも、18歳で出血時補充療法に切り替えた単回切替え群では、急速に関節症状が悪化し、中高年になる頃には生涯出血時補充療法群と変わらない状態になります。

生涯にわたる関節障害のシミュレーションのグラフ
調査概要
  • ●対象:オランダの重症血友病Aの患者さんで定期補充療法を実施している111人とフランスの重症血友病Aの患者さんで出血時補充療法を実施している69人
  • ●方法:対象者の約10年間のデータを元にして、「生涯出血時補充療法群」、「生涯定期補充療法群」、18歳時に定期補充療法から出血時補充療法に変更した「単回切替え群」、18歳以上で年間の関節内出血の頻度によって出血時補充療法か定期補充療法に最大8回まで切替えた「頻回切替え群」に分け、生涯にわたる出血・関節症状のシミュレーションを行った

出典) Fischer K et al. Haematologica. 2011. 96(5):738-743

定期的な注射は負担ではありますが、生活スタイルに合わせた輸注スケジュールを一緒に考えましょう。

進学、就職、転居、一人暮らし、結婚などをきっかけに、決められた輸注スケジュールを守れなかったり、受診頻度が下がってしまう人が少なからずいます。しかし、治療をおろそかにして出血を起こしたり関節の状態が悪くなってしまうと、結果的に大学や会社を休むことになったり、日常生活に支障をきたすことになるかもしれません。それでは本末転倒です。各回の輸注、そして医療機関の受診を組み込んだ生活スケジュールを立てて実践することは、社会人としてきちんと体調管理ができるという、あなたの強みにもなりますよ。

あなたに合った輸注スケジュールを組むために

  • 現在の出血頻度や関節の状態をチェック 現在の出血頻度や関節の状態をチェック
  • 仕事や趣味での身体活動の程度はどのくらいか 仕事や趣味での身体活動の程度はどのくらいか (立ち仕事である、スポーツをしている、など)
  • 輸注しやすいタイミングはいつか 輸注しやすいタイミングはいつか (平日の朝は余裕がない、休日なら落ち着いて時間がとれる、など)
  • 決められた日には必ず受診する 決められた日には必ず受診する 出血もなく順調に過ごしていても、決められた日(少なくとも3ヵ月に1回)には必ず受診しましょう。主治医と直接話せる良い機会ですから、不安や困っていることがあれば事前にメモしておいてしっかり聞いてみましょう。
  • 注射をしたら、すぐに輸注記録に記入する 輸注記録をつける注射をしたら、すぐに輸注記録に記入する習慣をつけましょう。出血や痛みがあったときにも忘れずに記録します。仕事や趣味の予定なども記入して、受診日には必ず持参するようにしましょう。

最近では、輸注頻度を減らす手段として、長時間効果が持続する製剤もありますので、あなたが治療を続けやすい方法を主治医と一緒に考えていきましょう。

コラム定期補充療法を始めるのに、遅すぎるということはありません

定期補充療法というと、子どもの頃に開始する治療法というイメージがあるかもしれません。すでに血友病性関節症のある場合でも、定期補充療法を行うことによって、関節の出血頻度が減少したり、関節症の進行を遅らせることができます。 18歳から72歳(中央値30歳)の血友病患者54人に対して定期補充療法を開始し、4.2年間の経過をみたイタリアの研究報告をご紹介します。この研究結果では、出血時補充療法から定期補充療法に変更することで、出血回数が激減し、検査・通院・入院回数なども減少し、欠席・欠勤日数も、1年間に平均4日程度になっています(図1、2)。血友病患者さんの寿命は、血友病でない人と変わらなくなってきています。10年、20年、30年後の未来を見据えたとき、日常生活に支障をきたさずに、いきいきとした老後を送るためにも、治療の見直しを検討することが大切です。

とはいえ、どのようにしたら、うまく定期補充療法を導入できるのでしょうか。習慣がない人にとって定期的な注射が負担になるのは当然です。その場合、週に1回、月に数回など、あなたができる範囲からスタートすればいいんです。意気込んで頑張りすぎても、続かなければ意味がありません。慣れてきたところで、回数を増やすなど次のStepを考えていきましょう。 そのためにも、主治医にあなたの希望を伝え、納得できる方法を話し合っておくことが大切です。あなたと同じように成人になってから定期補充療法を始めた方はたくさんいますから、患者会などで聞いてみるのもいいですね。

【図1】成人血友病患者における出血時補充療法と定期補充療法の効果
成人血友病患者における出血時補充療法と定期補充療法の効果
【図2】成人血友病患者における出血時補充療法と定期補充療法の効果
成人血友病患者における出血時補充療法と定期補充療法の効果
調査概要
  • ●対象:イタリアの重症血友病患者 84人のうち、18歳以上で定期補充療法を開始した重症血友病患者54人(うち、血友病A:50人、B:4人)
  • ●方法:患者の診察記録等から出血頻度、検査・通院・入院頻度に関するデータを調査した

出典)Tagliaferri A et al. Haemophilia. 2008. 14(5):945-951

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